思い出補正は正直うざいし、過去を美化しすぎていると思うんだ。なぜそんなに人は過去を美化したがるんだろう?
こうした疑問に答えます。心理学で証明されている、なぜ思い出補正は誰にも起こるのかの理由を知ることができれば、あなただって同じような心理が働くことがある理由が、はっきりと分かります。
まずは心理から見ていくことにしましょう。
思い出補正の心理・原因
人の本能が関係
人の脳は都合よくできていて、嫌な思い出や辛かった思い出は極力思い出さないように制御がかかり、逆に楽しかった思い出や美しかった思い出のみを残そうとする傾向があります。
これは当たり前のことで、自分が生きるにあたって嫌な思い出や辛い思い出を覚えていても、自分にとっては何のメリットもないからです。だからこそ嫌な思い出には意識的に制御がかかり、思い出補正が働きます。
例えば、忘れられない恋人との思い出というのは、楽しかった思い出や美しかった思い出ばかりが残っているはずです。逆に別れた時の辛さや忘れることができなかった期間を、真っ先に思い出す人はいないはずです。
また、人の脳は思い出そうとする時に限って鮮明に思い出させるのではなくて、少し捏造した形で思い出させようとする働きが見られます。これこそが、多くの人が思い出補正として美化してしまう原因なのです。
生き様を否定したくない
過去の自分を否定するということは、自分が必死で生きてきた時代を否定することにも繋がります。考えて欲しいのですが、自分たちが生きてきた時代より今の時代を褒めてしまえば、まるで自分たちの時代は良くなかったかのような、ネガティブな感情が働きます。
多くの人が昔に戻りたいとか、子供の時代に戻りたいと思ってしまう心理的原因の1つは、自分たちが必死で生きてきた時代は美しかったとか、今よりも輝いていたとの思い出補正がかかっていることが原因です。
お年寄りを例に挙げると分かりやすく、お年寄りの中には「最近の若者は…」と何でも若者を否定的に捉えることで、自分たちの世代の方が優れていたと主張する人がいます。
これも同じく、若者を否定しているのではなくて自分たちの時代を正当化することで、必死で生きてきた自分の生き様を肯定しようとしています。故に、これはあなたが年寄りになった時にも、同じような現象が見られることは間違いないと考えられます。
記憶力低下が原因なことも
歳を取ると記憶力が低下することは当然のことです。そして記憶力が低下してしまえば、最近の出来事を覚えるより元々残っていた記憶を思い出しやすく、今より昔の記憶を美化しやすくなります。
これは脳の記憶する機能が弱っていくことが原因であって、最近の記憶を頑張って取り出すよりも、元々残っていた記憶を取り出すほうがエネルギーの消費を抑えることにも繋がります。
さらに上記でお伝えしたような2つの原因から、お年寄りほど思い出補正がかかりやすい条件が揃っているわけですから、お年寄りほど過去を美化しやすくなるわけです。
「生きづらい世の中だ」とか、「昔の人は良く働いた」などの言葉を口にしてしまうのは、決して本人たちに悪気があるからではなくて、思い出補正になりやすい条件が最も整っているからだと覚えておきましょう。
思い出補正がかかりやすい人の特徴
恋を未だ引きずっている人
未だに過去の恋愛や元恋人のことを思う人ほど思い出補正が強く、あの子は素晴らしい人間だったと思い出を美化していくことで、現実の相手が見えなくなっていき、盲目状態の相手が見えるようになります。
これは完全に思い出補正であって、自分が本気で愛した相手がクズ人間であるはずがないと思い込むことで、相手の評価がどんどんと上がっていきます。するとやがて、相手に対してストーカーのような行為に出てしまうこともあるので、こちらの特徴は危険です。
今だに恋を引きずっていて、なかなか前を向いて歩くことができない人は、まず過去の思い出は補正によって美化されている現実を知る必要があります。そのためにも、悪かった思い出を思い出してみることにしましょう。
悪かった思い出は女性の方が鮮明に思い出しやすいですが、聖人のような完璧な人間ではなかった現実を認めることができれば、思い出補正は一気に下降修正され、現実の相手が見えるようになっていくはずです。