日本の若者は諸外国と比べて自己を肯定的に捉えている者(=自己肯定感が高い人)の割合が低位に留まっており、自尊心が低い状況にあると言えます。(「平成26年版 子供・若者白書(内閣府)」より)
自尊心が低い状態でいると、知らないうちに人生で多くの損をしてしまいます。
なんだか自分に自信が持てない、自分には存在価値がないのではないか?といったことを漠然と感じてしまう人は、ぜひこの記事を読んでください。
この記事では以下のようなことが書かれています(要点)。
- そもそも自尊心とは何か?について改めて頭を整理する
- 自尊心が低くなってしまう原因と、自尊心が低いことによって生じる問題を理解する
- 今日から取り組めるような自尊心を高めるための方法を紹介
自尊心とは
Wikipediaでは「自尊心」について以下のように書かれています。
- 自尊心(じそんしん)とは、心理学的には自己に対して一般化された肯定的な態度である
- 自尊心とは、他人からの評価ではなく、自分が自分をどう思うか、感じるかである
- 自尊心は、自分が有能であるといういわゆる自信と、自分に価値があるという自尊の2つの要素から成り立っている
<出典> Wikipediaより筆者抜粋
また、心理学者マズローの有名な「自己実現理論」における第4段階の欲求は「自己承認と自尊心」となっています。
マズローによれば、「自己承認と自尊心」に対する欲求は、自分で自分の能力や業績や自律性を認識して内側から満たされる場合と、他人に評価されたり尊敬されたりして外側から満たされる場合があるとされています。
そして、内側から満たされる自己承認の方が、外側(その場限りかもしれない他人の評価)から満たされる自己承認よりも「上質な承認」であるとされています。
このことは、似たような言葉である「プライド」について考えてみると分かりやすいかもしれません。
「プライドが高い=自信がある」とも言えるため、自尊心を高めるためには良いことのように思われます。
しかし、その一方で、プライドは他者との比較の結果に基づいて構築される場合が多く、失敗(打ち砕かれて傷つくこと)を恐れて防衛的になってしまうことにもつながるため、「脆い」という側面もあります。
やはり、他者との比較ではなく、自分の内側から自己を肯定できるような自信の方が安定性が高いと言えるでしょう。
世界的な女優であったエリザベス・テイラーは、その美貌にも関わらず、自分の容姿に大変なコンプレックスを持っていたと言われており、過食、薬物やアルコール依存症、8度の結婚など、波乱に満ちた生涯を送りました。
現代でもセレブな人達が薬物など自己破壊的な行動をすることが日々ニュースとなっており、外側から満たされるものよりも、内側から満たされる自己承認の方が如何に大切かということが分かります。
自尊心が低い原因
マズローは、欲求段階のどこかの段階でつまずくのは、たいてい子供の頃にその欲求が満たされなかったことに起因しているといいます。
例えば、赤ん坊の欲求より自分の欲求を大切に思う親に育てられると、親の気に入る存在になるために自分の欲求を抑えるようになり、本物の自分を見失ってしまう。
そして、親に気に入ってもらうために懸命に勉強して、高収入の職業につき、経済的・社会的な成功を収めることにつながったとしても、当の本人は自分に自信を持つことができないという状態に陥ってしまうのです。
そうした幼少期の親との関係と経験が自尊心が低い原因の最たるものになっています。
こうして自尊心が低い状態に陥ると、「自分は劣っている・弱い・無力だ」と感じて落胆したり、不快な感情を補おうとして必死に努力をするという方向に向かってしまいます。
外的な評価と内的な自己評価のギャップはますます大きくなる一方です。
自尊心が低いとどんな問題があるか
自尊心が低いと現実的にはどんな問題があるかについて、3つほど例示します。
1.自分の本心が分からなくなる
自尊心の低い人は、本当はやりたくないことでも、自分を押し殺してでも、他人を喜ばせることによって自分の価値を高めようと必死になります。
問題は、他人の欲求ばかりを気にして自分の欲求には目をつぶってしまう。実際、長期に渡って自分の欲求を無視していると、自分が何を望んでいるのかすらも分からなくなってしまうことです。
他者の評価を気にするあまり、自分の本心が分からなくなってしまうのです。これは本当に怖いことです。
2.成功する前に挫けてしまう
高い自尊心を持っている人は、目標に向かって努力している途中で壁にぶち当たったとしても、自分に対する自信が支えになって、耐え忍ぶ力が強い傾向があります。
本当の意味で自尊心の高い人は、ものごとがうまく行かないときでさえ、自分を肯定することができます。
一方で、自尊心の低い人は自己評価が低いので、「やっぱり自分には無理だ」と諦めるのも早くなってしまいます。
どんな成功者でも、何の失敗もなく成功したという人は稀で、むしろ失敗を多く重ねて学び、最終的に成功に辿り着いたという人の方が多いのではないでしょうか。
3.言い訳ばかりの人間になってしまう
心理学者アドラーは、「自分を評価できていないと深刻な劣等コンプレックスに陥る危険性がある」と指摘しました。
劣等コンプレックスとは「異常な劣等感でほとんど病気であり、劣等感の過度な状態に他ならない」というものです。
新しいことや難しい課題に対峙したとき、自分が如何に劣っているかをひけらかすことで、挑戦しなくても良い理由(言い訳)にすり替えてしまう態度のことを意味しています。
つまり、劣等コンプレックスに陥ると、難しいことから逃げる体質になってしまうのです。
自尊心が低い人の特徴
それでは、自尊心が低い人に見られる5つの特徴について説明します。
【自尊心が低い人の特徴1】他人を気にしすぎる
自尊心が低い人は、他人を気にしすぎる傾向があります。
子供の頃、「(他所の)○○ちゃんは賢いね。あなたも頑張らないとね」というように、親から他人と比較される経験を重ねた場合、自分の価値は他人と比較することで認められる、という考え方が刷り込まれてしまいます。
同様に、他人と比較して劣っている面を指摘される経験が多かった場合、どうしても他人と比べて劣っている部分に目がいきがちになってしまうこともあります。
そうして、他人と自分を比較する癖がついてしまい、自分の駄目な点ばかりが気になってしまい、自分に自信が持てなくなってしまいます。
自分を評価する視点が、「他者と比較した自分」という相対的な見方になってしまうのです。
【自尊心が低い人の特徴2】お人好し
自尊心が低い人は、他人を喜ばせることに熱心な傾向があります。一般的に「お人好し」と言われることもあります。
「他人を喜ばせて何が悪いの?」と思うかもしれませんが、本来の自分の願望ではなく、自己肯定感の欠如を埋める行為であることに気づいていない場合は、一時的には気分が高揚しますが、ストレスが溜まってしまいます。
また、前の章でも書いたように、自分の本心すら分からなくなってしまいます。
【自尊心が低い人の特徴3】自分に厳しすぎる
自尊心が低い人は、理想主義の傾向があります。
理想の自分があって、求める基準点が高いから自己評価が低くなってしまうのです。
「こうあるべき」「こうすべき」という厳しいマイ・ルールがあって、それを破る度に自分が駄目な人に思えて、必然的に自己評価が低なってしまいます。
それが転じて、他人にも厳しくなってしまうことがあります。
「こうあるべき」という言葉の裏側には「こうあって欲しい」という期待があります。相手が期待に応えてくれないと、勝手に「裏切られた!」と言って、怒ったり悲しんだりして自分をすり減らしてしまいます。
【自尊心が低い人の特徴4】謙虚すぎる
自尊心が低い人は、謙虚すぎる傾向があります。
謙虚であることを良しとするのは、日本人の道徳観に基づいています。しかし、謙虚さが度を過ぎると、新しいことや難しいことに対する挑戦の機会を逃してしまいます。
失敗して他人から非難されることもないため、「やらなくて良かった。やっぱり私には無理だったんだ」と自分で納得してしまいます。
しかし、失敗しない反面、成功体験も得られないので、自信の無さが反復強化されてしまい、自己評価がますます低くなってしまうという悪循環に陥ります。
【自尊心が低い人の特徴5】自分はできないと思い込んでいる
自尊心が低い人は、子供の頃の経験で「自分はできない」と強く思い込んでしまっている傾向があります。
子供の頃に、ふとした出来事(親や先生に叱られた)をきっかけに、「自分はバカだ」と思い込んだとします。
そして、その後、上手くいかないことがあったり叱られたりするたびに、「自分はバカだという考えはやっぱり正しかった」と確信していきます。
一見、分析的で論理的なように感じられますが、実際には全てが自分勝手な思い込みです。
これは、出来事に対する子供の理解の未熟さが原因で起こります。子供の理解は自己中心的なものであり、視野も狭いものです。叱りつけてきた大人は単に機嫌が悪かっただけという可能性もあるかもしれませんが、そんなことを考慮する余裕はありません。
一旦、結論が出てしまうと、これを再確認するような状況ばかりが頭に残り、「やっぱり自分の考えは正しかった」という認識が強化されていってしまいます。
このような確認型の先入観を抱いてしまうと、その後はずっと、どんな出来事に接しても、自分の考えの正当性を再確認するだけとなります。自分が正しいことを証明するのに忙しくて、出来上がった自分像を修正することができなくなってしまうのです。
自尊心を高める方法
ここでは、自尊心を高めるための方法を3つ説明します。
憧れの人になりきってみる
アドラー式のセラピーの一つに、「〜のように振る舞う」といった方法があります。
子供の頃、スーパーヒーローやアニメの主人公になりきる「ごっこ遊び」をしたように、自分がなりたいと思う人物のように振る舞ってみるのです。
体や行動を先行させると、心がそれにつられてその新しい存在を吸収し、それがやがて習慣になる、という方法です。
自分自身に問いかけてみる
例えば、肯定の言葉を書き連ねたメモを壁に貼ったり、ノートに書いてみたりするといった方法がありますが、最近の研究では無理に肯定しようとするのも良くないと言われています。
その理由は、潜在意識のレベルまでしか届かず、心の葛藤を巻き起こして疲弊してしまったり、緊張状態に追い込むような危険性があるためです。
自分自身に断言して無理に思いませようとするとするより、自分自身に問いかけてみる方が思い込みを変えるには有効であることが心理学者の実験でも示されています。
自分の否定的な考えを疑ってみる
また、自尊心が低い人は往々にして「悲観主義」の傾向にあります。本当は本人には悪いところはないのに、勝手に自分が悪いと思い込んで反省しているような感じです。
そこで、自分があらゆる出来事に対してどう反応しているかを観察し、疑ってみるのです。事実は本当に自分が思っている通りなのか、それは思い込みではないか?というように。
例えば、飲みに行こうと誘っていた友人からなかなか返事がこない時に、即座に「自分は嫌われているかもしれない…」と自分自身の思考が浮かんだとします。
そこで、その思考を打ち消すのではなく、「本当に避けられているのか?」「友人は忙しいだけではないのか?」「もしかしたら、都合が悪いことが起きているだけかも」といったように、悲観的なマイナス思考に対して疑問を投げかけるようにしていくと、少しづつ楽観主義の思考を習慣化させていくのです。
自尊心が低い人の特徴や原因|まとめ
恐ろしいもので、自尊心が低いと、他人と比べて自分を卑下して悲観的になってしまったり、他人からの評価を得るためにご機嫌を取ろうとして自分の欲求に目をつぶり続けた結果、しまいには自分が何を欲しているかすら分からなくなってしまいます。
少しづつで良いので、この記事に書かれている「自尊心を高める方法」を試してみては如何でしょうか?