「打たれ弱い人」とは、本来は格闘技で肉体的な攻撃に対するダメージに弱い選手のことを指します。
転じて、職場で上司や顧客から叱られたりした時に、気に病んでしまってなかなか立ち直れないような、精神的なダメージに弱い人のことも「打たれ弱い人」と言うようになりました。
打たれ弱い人は、日々ストレスを抱えやすいだけでなく、失敗を恐れて挑戦することを敬遠してしまって、人生で大きな損をしてしまう可能性があります。
この記事では、打たれ弱い人の心理と特徴、そして打たれ弱さを克服する方法をご紹介します。後半部分では、「打たれ弱い人への接し方」も載せていますので、ぜひ最後までご覧ください。
打たれ弱い人の心理と特徴
打たれ弱い人には、そうなってしまう心理的特徴がいくつかあります。
打たれ弱い人に共通してみられる心理と特徴を挙げますので、その特徴があなたや周囲の人に当てはまるかどうか確認しながら読み進めてください。
他人の目を気にしすぎる
打たれ弱い人は、他人の目を意識しすぎる傾向にあります。自意識過剰と言い換えても良いでしょう。
常に他人から見られていると感じていて、時には悪口を言われているのではないかと被害妄想を抱くことさえあります。
そのため、悪意のない他人の言動に対しても過剰に反応してしまい、些細なことで傷ついてしまうのです。
他人からの評価を気にしすぎる
他人の視線だけでなく、評価を気にしすぎるのも打たれ弱い人の特徴です。
他人から失望されたり、悪い評価をされるのを恐れて、自分の失敗に対するストレスを増幅させてしまいます。
これは「アダルト・チルドレン」の特徴でもあり、幼少期の親子関係が影響している可能性があります。
詳細は自尊心が低い人の特徴や原因|自尊心を高めるための3つの方法を読んでみると良いでしょう。
プライドが高い
打たれ弱い人はプライドが高く、完璧主義な一面があります。
自分が責められたり、言い負かされたりして、プライドを傷つけられることを恐ています。
そのため、他人の意見に敏感に反応して、時には感情的になって攻撃的な言動をとることもあります。
普通に接している人にしてみれば、突然キレられて怖い気がしますが、打たれ弱い人の自己防衛本能が根源になっています。
そして、キレた後に自己嫌悪に陥ってズルズルと引きずってしまうこともまた、こうした人の特徴です。
叱られることに慣れていない
打たれ弱い人というのは、子供の頃から家庭や学校であまり叱られることなく育ってきた人が多く、叱られることに慣れていません。
叱られることに対する免疫がないために、社会人になって上司や顧客から叱られた時に、不安と動揺を抑えきれません。
相手が叱ったつもりがない時でさえも、ビクビクしてしまって、自ら勝手に凹んでしまいます。
ネガティブ思考
打たれ弱い人は、物事を悪い方向へ考えてしまう「ネガティブ思考癖」を持っています。
自分に対する自己評価が低い傾向にあるため、物事がうまくいかなかった時に、「やっぱりダメだった」と再確認することで自分が傷つくのを防ごうとしているのです。
このように、ネガティブ思考の人は、実は自分が傷つきたくない願望が隠れており、傷つきやすいタイプといえます。
そのため、「やっぱりダメだった」と言って自分を守りつつも、心は傷ついてしまい、ますますネガテイブ思考を強固にしていくという悪循環に陥ってしまいがちです。
気持ちの切り替えが苦手
打たれ弱い人は、気持ちを切り替えることが下手で、嫌な記憶を反芻(はんすう)する癖があります。
例えば上司から叱られた時、その不快な記憶を忘れられずに、思い出しては嫌な思いを頭の中で繰り返し続けます。
その時だけでなく、後から何度も繰り返し苦しみ続けるのです。時には数週間に及びます。
この癖については、ストレスに強くなる方法17選で詳細を説明しています。
繊細・神経質
繊細な人や神経質な人は、他人が気に留めないことであっても些細なことまで気になって仕方がありません。
そのため、普通の人にとっては何気無い一言であったとしても、こうしたタイプの人にとっては、何故このような発言をするのだろう?裏に何か意味があるのではないか?というように引っ掛ってしまうことが多々あります。
頭の中でグルグルと考えているうちに、ついには疑心暗鬼に陥ってしまい、自ら勝手に気に病んでしまうのです。
打たれ弱い人の克服法
打たれ弱い人は、失敗や反対、嘲笑されるといったことが耐えられないので、行動する前に色々と考えを巡らせて、リスクを回避するために自ら行動を制限してしまうことが多々あります。
そうした防衛本能は自分を守るためのものですが、充実した人生を送るためには、デメリットの方が多くあります。
そこで、本章では、打たれ弱さを克服するための方法について紹介します。
未来の自分の目線で物事を判断してみる
昔の失敗を思い出してみて下さい。
トラウマになったような失敗は別にして、おそらくほとんどの失敗は、現在の自分から見ればそこまで大したものではないのではないでしょうか?
むしろ、笑い話として懐かしさや愛おしさを感じるくらいではないかと思います。
過去の自分は現在の自分にとってはある種、他人なので、客観的に見ることができます。
その時の失敗を悔やむよりも、失敗を恐れて諦めてしまったことで後悔していることはありませんか?
例えば、好きな人に告白することができなかったけど、振られても良いから気持ちを伝えていたらどうなっていただろうか…など人によって様々な後悔が浮かんでくるのではないでしょうか。
失敗をして叱られたり、恥をかいたりすることを避けるために挑戦を諦めることは、今の自分にとってはある種賢明な判断でもありますが、未来の自分から見たら、勿体無い判断をしている可能性があります。
「失敗を避けることのデメリット」を意識して、迷ったときは、未来(例えば10年後、死の間際)の自分が思い出した時に、今どうすれば一番後悔せずに済むか、といった視点で考えてみると勇気が湧いてきます。
失敗に対する考え方を改める
誰もが失敗はしたくありませんが、日本人は失敗することを嫌がる傾向が強く見られます。
日本の教育が「正解を導き出す方法を暗記する」ことを重視してきたことが影響しています。
知らないうちに「不正解=失敗=悪いこと」と刷り込まれてしまっているのです。
また、「沈黙は金」といった諺にも現れているように、積極的に意見を言うと損をするといった文化もあります。
そのため、外国人の輪の中に入ると、彼らが頓珍漢な意見でも堂々と発言することに驚いてしまうことが多々あります。
自分の意見を主張しないと、軽んじられてしまって損をする仕組みになっていることが影響しているのでしょう。
よく聞く話だと思いますが、発明王トーマス・エジソンは、失敗について次のように表現しています。
失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ。
「失敗がなければ何が最適なのかわからない」として、失敗を成功と同じくらい貴重なものと考えていました。
また、野球のイチロー選手やサッカーの本田選手のような成功者達も、常に「失敗」の大切さを語っています。
「だから今日から失敗を前向きに捉えて恐れないようにしよう」と言われてすぐに行動に移すことは難しいと思いますが、まずは自分の頭の中で『失敗を肯定的に捉える』ことから始めてみましょう。
メンタル・マッスルを鍛える
トレーニングして筋肉をつけることで身体を強くすることができます。
身体に負荷を掛けて筋を破壊し、栄養と睡眠をとり、”超回復”と呼ばれるプロセスを経て筋力は増強されます。
それと同様に、心の筋肉、すなわち「メンタル・マッスル」をつけることで”心を強くする”のです。
身体の筋肉と同じように、トレーニングをすればメンタル・マッスルを鍛えることができます。
そのためには、心に敢えて負荷をかける必要があります。
自分が普段から苦手に感じていることを、敢えてやってみるという方法があります。
例えば、会議で自分の意見を言えないなら、敢えて意見を言う。
二次会に誘われて、行きたくない時に、断って帰る。
というように、メンタル・マッスルを鍛えるために、敢えて自分の心に負荷をかけるのです。
身体を鍛える時に徐々に負荷を重くしていくのと同じように、自分の心が苦しさから回復するのを待ちながら、少しづつ挑戦の難易度を高め、回数を増やしていきましょう。
打たれ強い人のことを、「心臓に毛が生えている」などと表現したりしますが、自分の心臓をマッチョにするようなスマートなイメージをもってメンタル・マッスル・トレーニングに励みましょう。
失敗の回数を敢えて増やす
メンタル・マッスルを鍛えることと少し似ていますが、失敗したり、叱られたりしたことが気になるのは、実は叱られる回数が少ないという理由があるかもしれません。
打たれ弱い人は、普段から失敗することを警戒しているので、失敗するリスクがある言動を控える傾向があります。
失敗する回数が減るのは良いですが、凹む回数が少ないことで、却って失敗に対する免疫がつかずにますます打たれ弱くなってしまいます。
また、失敗の回数が少ないことで、一つ一つの失敗の重みが大きくなり、端からみれば大したことのない失敗が記憶に焼きついて離れなくなります。
逆説的ですが、日頃からチョコチョコと失敗して、失敗に対する感覚を鈍くしてしまった方が打たれ強くなります。
ラベリング効果を利用する
心理学にラベリング効果というものがあります。
相手に「あなたはこういう人ですよ」とラベルを貼ると、相手はそのラベル通りの性格になったり、行動を起こしてしまいがちになるというものです。
例えば、血液型性格診断が当たっているように思えるのは、このラベリング効果が働くからです。
A型の人が血液型のほんで、「A型の人は几帳面」という記述を読んで、それに納得してしまう(ラベルづけされる)と、つい意識して、それにあった行動をとるようになります。
すると、自分がそのような行動をしたという事実によって、ますます自分はA型気質何だと思い込むようになるのです。
自分で自分をA型気質なんだと思い込むようになるのです。
このラベリング効果を反対に活用して、短所を長所にする方法があります。
見方をちょっと変えて、短所だと思っていることを長所になるように言い換えをしてみましょう。
- 神経質 → 細かいことに気がつく
- 暗い・無口 → もの静か・口が堅い
- おしゃべり → 話し上手・ムードメーカー
- せっかち・短気 → 決断が早い・テキパキしている
- 優柔不断 → 周りに合わせられる
こんな風にどんなことでもポジティブにとらえれることで、短所だと思っているものを減らすことができます。
職場での打たれ弱さ克服法
ここでは、職場で上司から叱られることが辛い人のために、その克服法を列挙します。
- 叱る方の立場を知る
書店のビジネス書のコーナーに行くと、「どうやって部下を叱るか」といった本が沢山あります。上司は部下を指導したいのですが、叱りづらく感じています。叱る方も気を遣っていることを知りましょう。反対に、叱りやすい部下は上司に気に入られますので得しますよ。 - 自意識過剰にならない
叱られた方はそれをずっと気に病んでいたとしても、肝心の叱った方はすぐに忘れてしまうことが大半です。打たれ弱い人は、自分が自意識過剰であると自覚しましょう。 - 信頼関係を築く
上司との間で信頼関係が構築されていないと、言われていることの内容は正しくても、素直に受け止められずに、裏があるのではないかと疑ってしまうものです。反対に、信頼関係ができていると、上司もこちらに対する配慮が余計に働いて、気遣いしてもらえるようになります。雑談をしたり、一緒に食事に行ったりして、仕事以外の面でコミュニケーションをとって信頼関係を築く努力をしましょう。 - 気分転換する力を高める
打たれ弱い人は、叱られたことがいつまでも頭を離れません。反対に打たれ強い人はすぐに気持ちを切り替えることができます。気分転換する力を高めるためには、瞑想をすると良いでしょう。また、なかなか叱られたことが頭から離れない時のマイルールを作ると良いでしょう。(5分ほどオフィスの外を歩く、文句と一緒に息を強く吐く、等)
打たれ弱い人への接し方
打たれ弱い部下に対しては、本人がいる傍で違う部下を叱ることで、間接的に注意を促すという方法が効果的です。
これは、第三者を利用してターゲットに影響を与えるという心理学の手法です。
打たれ弱い人は他人が叱られても敏感に反応する、という特徴を利用したこの手法のことを「間接暗示話法」といいます。
打たれ弱い人に「叱られた」と気に病まれてしまうことなく、注意を伝えることができます。
使う相手と時を選べば有効に作用しますが、叱られた人から反感を買うこともありますので、くれぐれも使いすぎには注意しましょう。
打たれ弱い人の心理と特徴・克服法・接し方|まとめ
打たれ弱い人は、失敗して叱られたり恥をかいて傷つくことを恐れるあまり、挑戦することが苦手になってしまい、人生で損をするということが理解して頂けたのではないでしょうか。
一方で、周囲の他人は、打たれ弱い人の失敗や叱責を気にしていません。(みんな他人のことにそれほど興味がないというのが実情です)
それにも関わらず、打たれ弱い人がちょっとしたことで落ち込んでしまうと、腫れ物に触るようになってしまい、ついには面倒な奴ということになってしまって敬遠されるようになるでしょう。
そうならないために、ぜひこの記事で紹介した克服法を実践してみてくださいね。
また、ストレスに強くなる方法17選も合わせて読んでみては如何でしょうか?
ストレスによる弊害を科学的に明らかにした上で、ストレスを克服するための対策が詳しく紹介されていますよ。